さらりと、味わい深い歌唱になっている。彼女に真の実力があるからである。そのために、どの歌も、それぞれの歌が内懐にしまっている情感を、厚化粧させることなく、純度高くあきらかにできている。ザ・リアル・グループが大切にしているスピリッツを受け継いでいるためと思うが、彼女の歌唱は巧みさを衒わず、独特の品位の感じられるものになっている。春の風に誘われて、スウェーデンの、淡く咲く花の香りにふれ、ジャズ・ヴォーカルをきく楽しさをあらためて思った
。
黒田 恭一(音楽評論家)
その歌声と共に時計の針もゆっくりと刻まれる。優雅でたおやかな時間が流れる。歌声にも演奏にも生々しい息づかいが聴こえる。
じっくり向き合う。耳を澄ましてしまう。ゆっくりと引き込まれる。気持ちがほぐれ、穏やかになる。
ひとりの時間が実はとてもファンタスティックなときであることを教えてくれる。コーヒーや紅茶をポットで欲しくなる。そして本とクッキーも。
選曲と構成が大変に良い。ジャズやボサノヴァのスタンダードの趣味が一貫していると思う。ラヴェルやドビュッシー、チェットやジョビンを好きな人のセレクションだ。ついでに言うならアニー・ロスやブロッサム・ディアリー、モニカ・セッテルンドとビル・エヴァンス。僕にはわかる。
自分が大切に聴いてきた音楽が自然なかたちで反映されている。自分の糧になっていない借り物のアイディアはいっさい使っていない。時間が経てば風化してしまうような要素がないのだ。小さな光が宝石のように輝く。
アルバムを聴き終える頃には、疲れた身も心も少し潤いを取り戻しているだろう。
橋本 徹(SUBURBIA)
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